もはや2.5次元ではない〜ミュージカル憂国のモリアーティ感想
歌唱力の暴力か。
少なくとも私が見たことのある2.5次元ミュージカルでは過去最高の楽曲難易度であり且つ過去最強の歌唱力だった。
大阪公演はまだチケットあります。東京公演の当日券もおそらくべらぼーな倍率にはならないと思います。少しでも気になった人は本当に見に行ってほしい。後悔はさせない。
令和初観劇だったんだけど、最高の時代始まったなって感じ。
時は19世紀末、大英帝国最盛期パクス・ブリタニカのロンドン――。
古くから根付く完全階級制度により、上流階級の人間達に支配されている「大英帝国」。
生まれ落ちた時から一生涯の身分が決まるこの社会制度は、
必然的に人間同士の差別を生んだ。
そんな中、階級制度による悪を取り除き、理想の国を作ろうとする青年がいた。これはジェームズ・モリアーティ、
或いはシャーロック・ホームズの敵かたきの話――。
かの有名なシャーロック・ホームズとその宿敵モリアーティ教授のお話。
まず原作漫画が面白い。事前情報で3巻までをミュージカル化と出てたのでとりあえず3巻まで買えばいっか〜と思ってたんだけど気づいたら全巻揃ってた。テンポがすごく良いからサクサク進んでめちゃくちゃ読みやすい!すべてウィリアムが思い描いた通りに人は動くし死んでいく。あのホームズだってウィリアムの掌でころころ転がされている。悪者をバッタバッタ退治する話だから人がたくさん殺される物語なのに爽快感すらあって、こんな角度からシャーロック・ホームズを描いた作品があったのか・・・と思った。
演出もめちゃくちゃよかった。銀河劇場ありがとう!!!て感謝してしまった。(観た人にしか分からない感想)ポイントはボックス席。くぼひでさん推しは2階ボックス1に座ると死ぬ。
客席全体を使った演出があってそのシーンでは私たち観客がまさに観客役になる。もっと言うと1階席に座ってる人は下民役だし、2階席以上特にボックス席の人は貴族役。なので1階席じゃなくて落ち込んでても大丈夫。あの場では貴族になれます。
劇中劇のオペラ上演中、奈落から死体と小南くんがせり上がってきて殺人が大勢に露わになるシーン。いきなりパッと客電がついて開演前みたいに全体が明るくなるんだけどそれが観客役スタートの合図。
もう〜〜〜ちょうたのしい〜〜〜〜〜!!!
このシーンだけは劇を観てるじゃなくて参加してる感覚になれるから、おもしろいとか歌うめ〜じゃなくて楽しいって感想が浮かんでくるんだよな。小南くんの悪役もパンフレット読んだらふふっとしてしまうのでパンフは買うべき。というか小南くんめちゃくちゃ顔がいいね?!?!あの端正な顔が狂気に歪むのはぜひ円盤でアップで見たいと思った。
原作も演出もどれを取っても素晴らしいんだけど、今回は何といってもキャスティングが最高of最高だと思うんだよ。
全員もれなく歌が上手い。かつてこれほど安心して歌を聴くことができる2.5次元ミュージカルがあっただろうか、いやない。歌が上手い2.5次元といえば「さよならソルシエ」を思い出すんだけどそういえばこちらも平野良くんが出ていたな。
出演者全員めちゃくちゃ良いんだけどW主演の2人が周りを圧倒しすぎててシビれた。
鈴木勝吾くんののどはバケモノなんだろうか?なんなんだろうあの高音。1人だけぶっ飛んでる。のど大丈夫なんかあれ。音楽の知識は全くない私だけれど成人男性があの音域を出すのはやばいしそんな人間めったにいないことくらいはわかる。彼、人外を演じることが割と多い*1んだけど、今回は“人”でありながら“悪魔”のような役なのでそれはもうハマりにハマっている。ハマりすぎている。人間離れしたあの歌声が人間離れしたウィリアムの頭脳や信念とあってるんだなあ、奇跡の融合だなあ、これは・・・。
ウィリアムの歌でダントツ好きなのはダブリン男爵殺しの♪貴方に~裁きを~~~です。えっそんな高い音から入んの?!?!?!てなった。 ダブリンはグレープフルーツじゃなくてウィリアムの声に殺されたんじゃないかと思う。あの歌声は刃物の形をしていて舞台上では次々に人を殺し客席にも刃の雨が容赦なく降ってくる、そんな感覚。
でもそんな悪魔のようなウィリアムが唯一人間味溢れる歌い方をするところが2幕のルイスと2人きりのシーンなんだ・・・。あそこだけはめちゃくちゃ優しい声をしていてまるで子どもに戻ったような雰囲気がある。優しく優しく、壊れ物を扱うような歌声。このギャップはなんなんだ〜!
彼をウィリアム役に選んでくれたマーベラスさん本当にありがとうございます。仮に再演があってキャスト変更しなければいけない場合どうするんだろう、あの音域を歌える若手俳優なかなかいないと思う・・・。
ただ残念なことに円盤になると彼の歌の魅力は半減してしまう(音量を下げられてしまう)ので、劇場で見なきゃもったいない。めちゃくちゃもったいない。生であの圧を感じてほしい。
彼が朗々と歌っている姿、何かに雰囲気似てるな・・・てずっと考えてたんだけどさっき思いついた。ディズニーシーのマーメイドラグーンシアターのトリトンだ。両手広げて歌ってるとそれぐらいの貫禄がある。初日はちょっとかたい感じするな~と思ってたけど、2日目以降回を追うごとにどんどん声がのびやかになっていってるので、もはや怖い。大千秋楽にはどうなっているんだろう。
悪魔のようなウィリアムに対して、めちゃくちゃ人間味のある歌い方演じ方なのが平野良くん演じるシャーロック。まずその抜群の安定感に舌を巻いた。純粋にお芝居も歌もめちゃくちゃ上手い。加えてシャーロックの解釈がバチクソに一致した!普段はおちゃらけてるけど決めるときにはバシッと決める少しクセのあるシャーロック、漫画からそのまま飛び出して来たのかと思った。
今回、ギャグパートとか日替わりは全てホームズ側が担当してるんだけどそれがすごくいい箸休めなんだ。シャーロックとレストレード警部の掛け合いとか同居人オーディションとか。ここ、死んだはずの山岸さん(ダブリン男爵)が粗い女装で出てくるからおとせやん*2かと思ってしまった。(銀河劇場ということもあり)
平野良くんのシャーロックの歌はめちゃくちゃ軽やか。ドSな作曲家がウィリアムにエグい高音を課したのだとしたら、シャーロックにはエグいリズムを与えたんだと思う。朗々と歌う楽曲が多いウィリアムに対してシャーロックは会話するように軽やかに歌うものが多い。そういう歌って歌詞が聞き取れないことが多々あって、円盤見ながら歌詞カード読んで初めて理解するってことも少なくない(単に私の耳が悪いだけかもしれない)んだけど、平野くんの歌は確実に歌詞を聞き取れるからすごい。だからといって不自然に発音がいいとかではなく会話にも歌にも溶け込んでるからなおのことすごい。
日比谷のイベント*3の2曲目『名推理』を聴くとよくわかる。
ミュージカル『憂国のモリアーティ』公演直前スペシャルイベント
イントロ好き。
他のキャストもちょう良いんだけどめちゃくちゃ長くなるから一言ずつ・・・。
山本一慶くんは顔がいいし兄さん大好きなところが大好き。くぼひでさんは落ち着いて気品があってまさに貴族って感じだし、井澤くんは安定。モラン大佐役を井澤勇気くんにしたのは解釈の一致すぎる。赤澤遼太郎くんは失礼ながらおそ松さんの印象しかなかったのでこんなに歌上手いんだ?!と思った。
けんけんさんが歌うとどうしてもココア男。を思い出してしまう。私の青春。出番少ないのがめちゃくちゃもったいない。しゅんりーさんはさすが。もっとシャーロックとレストレード警部の絡みを見たい。小南くんはとにかく顔がいい〜!
原作も演出もキャストも全てが素晴らしく、“新たな2.5次元”って感じなので1人でも多くの人に見てほしい。銀河劇場で今をときめく若手俳優の歌を全身に浴びよう。リピーターチケットの列も日に日に伸びているし評判も良いし、マーベラスさんぜひ続編をお願いします。
そういえばミュージカル化と一緒に舞台化も発表されている刀剣乱舞方式(?)なんだった。そっちはどうなるんだろ〜まさかキャスト一緒ではないよな?!
どちらにせよめちゃくちゃ楽しみ。憂国のモリアーティ、どうか続いてください。
p.s.
リピーター特典のスタンプカードめちゃくちゃ笑った。なぜ💩なんだ。ちなみに写真はないけど3つ目はさくらんぼだった。