まえがみをきろう

ただのOLのただの備忘録

この初日を一生忘れない。〜ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.2-大英帝国の醜聞- 感想

 

 

初日の幕が上がった。

 

 

もう、何と言葉にしたらいいか分からない。今年2月ぶりの生の演劇、ミュージカルの歌声を身体中に浴びた。涙が出た。カーテンコールでは座長2人も涙声だった。客席からは啜り泣く声がたくさん聞こえた。

ああ、生きててよかったな、と。この4ヶ月を生き抜いてよかったと心から思えた。

 

 

初演に続く観劇だった。同じ銀河劇場のはずなのに、1年前とは何もかも違っていて。入場前の消毒、自分でもぎるチケット、フェイスシールドでがっちり防備したスタッフさんたち、そして何よりも半分も埋まっていない客席……。1年ぶりの銀河劇場は、すっかり異世界に迷い込んだような空間だった。

 

1年前、こんな記事を書いていた。まさか1年後に世界がこんなに変わっているなんて。

tadaol.hatenablog.com

 

今回のop2をひとことでまとめるのであれば、「進化を超えた進化」。今回もまったくもって期待を裏切らない完成度だった。

W主演の鈴木勝吾さん(ウィリアム)、平野良さん(シャーロック)を始め前回から続投のキャストに、根本正勝さん(マイクロフト)、大湖せしるさん(アイリーン)という最強の2人を加えた布陣。さらには脚本演出の西森さん、作曲のただすけさん等々安定のスタッフ陣。このメンバーが集まっているという時点で、そもそも始まる前から成功しか約束されていなかったわけだ。

だからこそ、だからこそこんなご時世でさえなければ、思う存分モリミュの世界を表現できただろうに。もっと多くの人が生でこの素晴らしい作品に触れられただろうに。

悔やんでも仕方がないのは重々承知だが、この感情をどこに向ければいいのかわからない……。

 

初日を終えて不思議だったのは拍手の音。客数は半分以下のはずなのに、不思議といつも以上の大きな拍手が聞こえた。キャストやスタッフ、公演に関わる人の全てに向けた、大きな大きな拍手が聞こえて、そんなところにもいちいち泣きそうになった。

 

 

さて、ここからがっつり公演のネタバレを含みます。未観劇の方はご注意ください。

初日を観た興奮そのままに書いているので、おそらく事実と違う点が多々ありますが、幻覚を見ていたんだなと思って大目に見ていただきたいです。(こっそり追記したりもしてます)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副題にあるように、今回は原作でいう『大英帝国の醜聞』がメインだった。単行本では3巻『バスカヴィル家の狩り』~6巻『大英帝国の醜聞』まで。

話の流れはこんな感じ。(公式HP、Storyより抜粋)

第一楽章「バスカヴィル家の狩り」

第二楽章「二人の探偵」

第三楽章「大英帝国の醜聞」

 

まずは場面ごとの感想を。

 

◆オープニング

 始まりは“あの2曲”。前作の円盤を擦り切れるほど見ている私にとっては、親の声より聞いたあの曲たち。

最初はまずアンサンブルがメインの歌なんだけれど、第一声からレベルの高さにびっくりした。確実に前作を超えてきている…!アンサンブルさんたちについては後述するが、モリミュop2のMVPは間違いなくこの方々。

 

初っ端からジョン(鎌苅健太さん)の光の歌を存分に浴びれたこともとても良かった。前作の終わりが(全員曲を抜けば)ジョンの「僕だけは」だったので、今作の始まりもジョンの光だったのはニクイ演出だな~。

ジョンとハドソンさん(七木奏音さん)の221Bわちゃわちゃソングも可愛くて癒された。異臭が染みつくのは賃貸物件としては厳禁だよね…。

 

 

◆第一楽章『バスカヴィル家の狩り』

個人的にはバスカヴィルを扱ってくれたというのが、もう嬉しかった。前作ではウィリアムとルイスの葛藤と絆を描いたシーンが原作を先取る形でノアティック号に組み込まれたので、今作ではスルーされるかもと思ってたところもあり…。今作のその辺りは兄さん大好きに置き換えられていた。悪い貴族をやっつけろ、だ!

 

ルイス(山本一慶さん)の兄さん大好きソング、群を抜いて狂ってない?最高。有識者の方がいらっしゃったら教えてほしいのですが、彼はあの曲中で何回「兄さん」と口にしましたか?(次回観劇で余裕があれば数えようと思うので、しれっと追記しているかも。)

※8/2追記

バスカヴィル前の兄さん大好きソング、数え間違いがなければ曲中は9回「兄さん」が登場したような。曲の前後もセリフで言っていたので、ここだけで前回の記録15回(山本一慶さんの配信で言ってたはず)の2/3は余裕で消化してる。予想以上に絶好調なルイス。

兄さん好き好き感が前回の比じゃないので、終始ニヤニヤしてしまう。マスクがあってよかった。

 

 バスカヴィルの何が好きかというと、やっぱりアクションに尽きる。殺陣は見ていてスカッとするからめちゃくちゃ好きだなあ。前作もそうだったけど、ルイス、モラン(井澤勇貴さん)、フレッド(赤澤遼太郎くん)の3人のチームワークがとても良いんだ。

ルイスの冷静でありながら狂気に満ちた「兄さんのためにうまく焼けた」も、モランのひたすらにかっこいい「お前が見たのは死神だ」も、フレッドのただただ真っ直ぐな「全員救いたい」も、バスカヴィルにはモリアーティ陣営の実働部隊それぞれの魅力が多分に詰まっている。

 

貴重な(?)ウィリアムの殺陣も見られるので、とても満足度が高い。対バスカヴィルの時の♪悪魔よ〜〜〜地上から去れ〜〜〜が好きすぎる。前回のダブリン殺しの♪貴方に〜裁きを〜的な歌で、同時に殺陣もするもんだから鈴木勝吾さんの魅力がめちゃくちゃ詰まったとんでもないシーン…。バスカヴィルは仕込み杖ではなくてウィリアムの高音に殺されたんだと思う。(同じような感想前回も言ってた…)

 

バスカヴィルを入れてくださった西森さん、ありがとうございます。

 

 

◆第二楽章『二人の探偵』

列車の話。短いけど原作漫画の中で一番好きな話かもしれない。モリミュ初演を通してすっかり原作ファンになった私は、第一弾キービジュが発表された時点で大興奮だった。だってこの列車の事件にはあの名台詞があるんだから……。

ウィリアムとシャーロックの2度目の邂逅、こんなん興奮しない方がおかしいじゃないか。超クセ強シャーロック、このエピソード前半ではより多分に狂っていたが(まさにクスリがきれた薬中みたい)、ウィリアムを見つけた瞬間のリアクションはまじで異常だった。

 

(余談だが、いわゆる“本誌勢”になってから数ヶ月、毎月4日がめちゃくちゃしんどい。ウィリアムとシャーロックの何度目かの邂逅を経て、今まさに大変なことになっているので機会があれば読んでみてください。死にます。)

 

さて、例の「Catch me if you can」は、おっそこ歌にするのね!というのが最初の感想。(ほんとに歌だったよな…?記憶があいまいだ)このシーン、ウィリアムもシャーロックも目が輝いていてすごく良いな~。

その後の謎解きのシーンも含めて、天才同士のハイレベルなやり取りをお互いが心から楽しんでいるのが、これぞ『憂国のモリアーティ』の醍醐味だな、と思った。“二人だけの世界”っていうのが客席にもビンビンに伝わってくる。いいね、楽しそうだね、二人ともウキウキしてるね…!(ルイスはじめ周りの3人はヒヤヒヤで可哀想だったけど…)

 

最後の「今度メシでも」も、原作にはない緊張感があって非常に良い。モリミュで3度目の邂逅が叶う時は来るのだろうか……。

 

 

◆第三楽章『大英帝国の醜聞』

来ました、今作のメインディッシュ。アイリーンも本格的に登場し、『憂国のモリアーティ』ストーリーの核心に迫るとてもとても重要なお話。今回モリミュでこの話を扱うにあたってストーリーの改変が一番入ったエピソードでもあったが、そこはさすが西森さん。自然に、というよりむしろ原作よりも丁寧に『大英帝国の醜聞』が描かれていてとても驚いた。

 

原作では主にシャーロック陣営に焦点が当たっているので、ウィリアムの登場シーンは少ないんだけど、舞台ではロナルド・ロリンソンをうまく使ってそれをカバーしている。どころか、原作の補完もしていてただただすごいの一言だった。

 

あとは、やっぱり何といってもアイリーン・アドラー役の大湖せしるさん。これについてはキャスティングの時点で勝利が約束されていたようなものだが、実際にこの目でそれを観て、勝利の予感が確信に変わった。いやもうこんなんずるいじゃん。男装時はキリッとかっこいい中にセクシーさがあって、女装時はセクシーの中に茶目っ気や芯の太さが垣間見えて、女性として最強すぎるキャラクター。それを乗りこなす大湖さんがまた最強。この時間は間違いなく、アイリーンのアイリーンによるアイリーンのためのモリミュだった。

 

モリアーティ陣営でいえば、やっぱりアルバート兄様(久保田秀敏さん)が最強…。ただただ顔が良いのはもちろんのこと、歌も前回からさらにパワーアップしていて、長男の風格出ていて非常によかった。

あと、地味な見どころポイントとしては、メイド服姿のフレッドですね…。(あれ幻覚じゃないよな?)なんかメイドさんいるなと思ったら喋り出してみるとフレッドで、周りの方々が一斉にオペラグラスを構えたのも面白かった(?)

 

そして2回目の観劇で気づいたのが、ラストの教会のシーン、ハリボテの警官が包囲するところはもしかしたら客席全体を使って演出したかったのかもな…と思った。前回の船上オペラみたいに。ああ、こんなご時世でなければ……。

 

 

楽曲については、今回は総じて歌の難易度がべらぼーに跳ね上がっていたのが印象的。ただすけさんは鬼畜だなあ。ウィリアムなんて、前回の数倍高音があっていっそ可哀想になるけど、観ている側としてはめちゃくちゃ楽しいのでOKです(?)

 

 

 

続いて、キャスト別に簡単に感想。

 

◆ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役:鈴木勝吾さん
シャーロック・ホームズ役:平野良さん

モリミュの核であり、格を決めたW主演の二人。今回『二人の探偵』をやると発表されてから、この二人の絡みがそれはもう楽しみで楽しみで。何度も言うけど、本当にこの二人、会話のやり取りも歌の掛け合いも本当に心から楽しそうにやっているのが客席にも伝わってくる。それだけお互いがお互いにとって特別な存在なんだろうなと思う。

 

ロンドンの「闇」と「光」の二人。だけどキャラクター的にはウィリアムが“陽”でシャーロックが“陰”な感じがする、っていうの分かる方いませんか?そこが個人的にエモいポイントなんだよな…。

(この二人の関係性がキタという方は、今すぐ原作12巻まで読んでください。大変なことになっています。)

 

いや、というか、最後の歌、なに…?オーラスの曲、前作はメインテーマを繰り返す形だったので今回もそのパターン?と思ったらウィリアムとシャーロックのデュエット…!今日いち滾った。やっぱりモリミュの核はこの二人なんだと見せつけられました。この二人なら、op3もop4もop5も続けていける。くれぐれもお願いしますね、マーベラスさん。

 

 

アルバート・ジェームズ・モリアーティ役:久保田秀敏さん

圧倒的に顔がいい。歌に関しても前回より見違えて良くなったように私は感じた。貴族の風格、長兄の風格、どれをとってもアルバートだ…と圧倒される。マスカレードが最高だった。

 

 

◆ルイス・ジェームズ・モリアーティ役:山本一慶さん

あなたは何回「兄さん」と言うの?原作のエピソードもそんな感じなので、今回は前作に増して兄さん狂なルイスが出ていた。これからもそんなルイスでいてください。

(ちなみにルイスの兄さん狂っぷりが気になる人は8月号のジャンプSQをぜひ読んでいただきたい。表紙で死ぬ。)

 

 

◆セバスチャン・モラン役:井澤勇貴さん

過去話そこでするんか!!??バスカヴィルでモランの過去についてフラグが立ったので、これをどう回収する…?と気になりながら観ていたのだけれど、まさかそれを醜聞のロリンソンに絡めるとは思わなかった。良い切り口だとは思ったけど、少々詰め込み過ぎな気も…。

あとこれは自明だが、足が長すぎる。腰の位置が高すぎる。そこだけ時空が歪んでいるように見える。

 

 

◆フレッド・ポーロック役:赤澤遼太郎さん

バスカヴィルの真っ直ぐなフレッドに心打たれた。劇中でもカンパニーの中でも年下で、みんなに可愛がられているんだろうな、可愛いな…と親戚のおばちゃんのような気持ちになる。

私の幻覚でなければ、彼はメイド服を着る。

 

 

◆ジョン・H・ワトソン役:鎌苅健太さん

圧倒的光。カンパニーの中でも年上メンバーだと思うが、この愛くるしいワンコ感は何なんだろう…。シャーロックはジョンの光に救われているけど、観ている私たちもジョンの圧倒的光に救われてる。いつもありがとうございます。

 

 

◆ミス・ハドソン役:七木奏音さん

ハドソンさんファンの方々お待たせしました!超絶可愛い歌があります。さすがは永遠の17歳。愉快なバックダンサーを連れて、プリプリ怒りながら歌うの、それはもうかわいい。“国民の妹”って感じだった。

 

 

◆ジョージ・レストレード役:髙木俊さん

まずは前回から大幅に出番が増えたこと、おめでとうございます!前作で祈った甲斐があった…!今作もさすがの面白さで、彼がいることでモリミュという作品全体が救われている気がする。ちょろっとだけどグレッグソンとの絡みもあって嬉しかったな。

 

アイリーン・アドラー役:大湖せしるさん

キャスティング時から勝利が約束されていた①

詳しくは上述したので省略するが、『大英帝国の醜聞』では圧倒的な存在感だった。

 

 

◆マイクロフト・ホームズ役:根本正勝さん

キャスティング時から勝利が約束されていた②

あのシャーロックでさえも叶わないマイクロフト、完璧だった。アルバートも然り、長兄の風格があって役の説得力がピカイチ。

 

 

◆アンサンブル、演奏の方々

間違いなくモリミュのMVPです。一曲目の、第一声。これだけで今回のモリミュも成功なんだってことを決めたと思う。あとはバスカヴィルだったりロナルド・ロリンソンだったりの貴族役もすごい。ロリンソンは上條さんかな…?(違ってたら申し訳ない…)この方がめちゃくちゃ良い。周りを圧倒していた。プリンシパル、アンサンブルという便宜上の区別はあれど、そんなことを全く感じさせない素晴らしさだった。

ウィギンズは今回も生意気でかわいいなあ。

 

 

 

改めて、 

こんなに素晴らしいキャストがいて、素晴らしいスタッフがいて、素晴らしい作品が出来上がっている。本当に、今これを上演できていることが奇跡なんだと、この記事を書いていて改めて思った。

カーテンコールで座長も言っていたけど、千秋楽まで1公演1公演を勝ち取って、無事に終えられるよう、切に願っています。

 

私は運よく東京近郊に住んでいて、1人暮らしで、普段から都内に出勤してる身なので今さら銀河劇場に行くのにはあまり抵抗はなかったけど、やっぱり観劇自体を断念した方も多いと思う。どんな判断が正しくて間違っているのか、答えなんて出せないけれど、ただ初日を迎えられて、それをこの目で見ることができたという事実があるということは、ただただ嬉しい。

 

こんなご時世で、何事もなく、ただ何事もなく千秋楽を迎えられますように。

 

 

p.s.

このエピソードが好きすぎる。

 

ただいまー!

f:id:tadaoltada:20200802201939j:plain

/ おかえりー! \