まえがみをきろう

ただのOLのただの備忘録

冒険の始まり〜ミュージカル『マギ』-迷宮組曲-感想

 

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全公演完走おめでとうございました!

新作2.5次元の中で久しぶりに個人的大ヒットをたたき出したので、ずっと放置していたブログを開きました。

 

※観劇(視聴)した方、原作を知っている方むけの感想です。ネタバレにはご注意ください。

 

目次

 

総評

素晴らしい原作再現でした。

原作は「千夜一夜物語」をモチーフとした冒険譚で、ダンジョンやら魔法やら青い魔人やら、ファンタジー要素がもりもりな作品。
私はもともと原作ファンで、「いつか舞台化しないかな~。でも主人公はショタだし魔法の再現も難しそうだしないかな……」と思っていたのですが、2022年になってまさか舞台化!*1

まず、連載終了から数年経っているマギを扱ってくれたことがすごく嬉しかったのですが、それと同時に舞台化できるのか…?と少しの不安もありました。(結果的に杞憂に終わりましたが)

後述しますが、演出、曲、キャストetcすべての要素で期待値を上回った舞台でした。原作のあのキラキラワクワクするような世界が舞台上に広がっていて、10年前夢中で漫画を読み、アニメを見ていたころを思い出して懐かしい気持ちに。

やはり主人公のアラジンとアリババがバランスよかったのが印象的です。原作はこの2人の冒険譚で、2人とも作品が進むにつれてどんどん成長していくようなキャラクター。特にアラジンは、初舞台・初主演の宮島くんと作中のアラジンの成長が重なるようで、劇以外の体験という意味でもすごくマギっぽくて良かったなと思います。
お兄さんポジションの猪野くんも本当にアリババのようで、月並みな感想ですが「ああ、舞台上にアラジンとアリババがいる…!あの頃夢中だったあのキャラクターたちがいる…!」とずっと思っていました。

 

中身としては、1幕の満足度がとても高くて2幕がちょっと蛇足感がある(というか1幕に時間を割きすぎて2幕がけっこう端折られていたので、そこは改善の余地があったんじゃないかなとは思う)とは思いつつ、全体としては満足です。

終わり方的にほぼ確実に続編はあるだろうと思うので、今から楽しみです。

 

原作再現

安心安定の吉谷さん。*2

まず、舞台化するにあたってストレートプレイではなく、ミュージカルを選択したことが大正解だったなと(そもそも自分がミュージカルが好きというのはありますが)。

そもそもこの原作はすごく壮大な話で、登場キャラも多く、設定も複雑……とてんこ盛りな作品なので、普通に原作をなぞるだけではそのうち収拾がつかなくなる恐れがあります。
その点ミュージカルであれば、歌で世界観の説明ができたり、山場のコントロールがしやすかったりするので、ドラマを作りやすかったんじゃないかな、と思います。
後は単純に、すごくファンタジーな話なのでミュージカルとの親和性も高い。

作曲はかみむら周平さんで、2.5次元ミュージカルはあまりないようですが*3、それが逆に良かったのではないかと思います。
ファンタジーで明るい話だし、曲調ももっと軽く作ったり、いわゆるキャラソンミュージカルのような方法もあったのではと思いますが、しっかり重厚に、丁寧にミュージカルを作ってくださっているのが曲から伝わってきて、大好きです。
特にテーマ曲と1幕ラストの曲は、今後の物語の世界の広がりや壮大さにも負けない、ずっと歌い続けられる曲だなと思います。

 

演出面では、アナログ演出と映像演出の融合が見事でした。私はもともと、映像を多用する舞台より、人/セット/照明/音響etcを駆使して世界観を作り上げるアナログ演出が好きなのですが、この作品は、笛から青い魔人が出たり、空飛ぶターバンに乗ったり、剣を振って炎を出したり…とアナログ演出だけでは表現が難しいようなシーンがたくさん。
どうやって再現するだろう…と心配半分期待半分でしたが、大満足の演出でした。映像ばかりだとどうしても薄っぺらくなってしまいますが、アンサンブルや小道具で立体感を、映像でディティールを映していて、しっかり考えて作られているなと感じました。

 

キャスト

この3人がとてもよかった!!
うまいなあと思いながら劇場を出たら、周りの方たちもTwitterでも割とこの3人に評価が集まっていて、だよねだよねと思っていました。

 

アイドルの子か、と思って観ていたらとんでもなく実力者でびっくりしました。歌の安定感とアクションの迫力で圧倒されたと思えば、モルジアナの演技の可愛らしさに心掴まれ、登場シーンはずっと岡田奈々ちゃんショータイムになっていました。

アラジンやアリババと共に、今後の舞台でのモルジアナの成長もすごく楽しみになりました。

 

歌がうまい
ジャミルって原作だとTHE小物って感じのキャラクターなんですよね。それが、川久保さんが演じることによって、しっかり1幕のラスボスになっていたのが流石の貫禄でした。

川久保さん、これで最後なのもったいなくないですか?!続編でまた見たいです……練家の誰か……紅炎とかどうですかね?!

 

  • ジュダル/ファティマー(手島章斗さん)

登場回数はプリンシパルの中でも特に少ない方ですが、しっかり爪痕を残しているのがすごかったです。

ジュダルの今回の役目は主に世界観の説明と次回予告で、登場シーンは少ないものの、全ての台詞と歌詞が今後に繋がる重要な伏線。なのでどうしても説明くさくなってしまいがちですが、どの台詞/歌詞もくどさがなくスッと入ってきます。

初舞台とのことでしたが、今後がすごく楽しみな俳優さんだと思います。(まずは次作で存分に暴れてほしい!!!)

 

そしてこの3人が揃う、2幕の盗賊砦編は最高でした。中心となるモルジアナの存在感と、脇を固めるファティマーとジャミルの安定感。絶妙で良いバランスだったと思います。

ファティマーとジャミルのハモリは心地よくてずっと聴いていたいし、モルジアナはすごく小柄で華奢な女の子なのに、舞台上のあの存在感は素晴らしい。対ハイエナのアクションもいい迫力でした。

ここ演出的には、赤いライトを2つセットで使って暗闇光るハイエナの眼を表していたのが良かったですね。変に映像にしてたら安っぽい演出になってたと思うので、照明とアンサンブルを駆使して迫力満点に仕上がっていたのがよかったです。ありがとう吉谷さん。

 

衝撃のラスト

散々Twitterでも書いていましたが、終演後「え?!そこで終わる?!!4章構成の最終章が丸々次回予告ってどういうこと??!!?!」となります。
いやそもそもキャストが発表された時点で、「カシムやジュダルがいるのにシンドバッドがいない」ことから、どこまでやるの…?という疑問はあったのですが。

ただ、この「そこで終わり?!」は決して悪い意味ではなく、この作品に関しては次作に向けた効果的なラストを描けていたと思っています。大ラスの曲で盛り上げて、観客の気持ちを高めたまま一気に幕を下ろす手法、すごくよかったです。

アリババの「俺の友達の話を聞いてくれるか?」という台詞で締めるのも、今作の主題である「アラジンとアリババの出会いと友情」と、次作の主題になるであろう「アリババとカシムの友情と終結」の対比が見えて、より続きが楽しみになりました。
(だからこそ大千秋楽で続編発表あると思ったんだけどな……結局なかったな……)

ただ、私は原作ファンでこの後の展開を知っているからこのように思えていますが、舞台だけ見た人はどんな印象を持つんだろうというのは気になります。「終わり?で???」とかならないかな。ブツ切りで手抜きとか思われないかな。その点少し心配ではありました。

 

最後に

ラスト疑問は残りますが……全体としては満足度高く良い2.5次元舞台でした。

原作はシンドリア編〜マグノシュタット編あたりが一番好きなので、そこまではやってほしいなと思いつつ、まずは次回バルバッド編を楽しみに待とうと思います。

全公演お疲れ様でした。

 

HP
ミュージカル「マギ」-迷宮組曲-公式サイトwww.musical-magi.com

配信
Paravi(パラビ) - 人気番組が楽しめる動画配信サービスwww.paravi.jp
7/24(日)23:59までアーカイブ購入、購入後1週間視聴可能です。ぜひ!

原作

app.sunday-webry.com
原作読んでみたいな〜と思った方はこちらから!
少年サンデー公式アプリにて、全37巻最終話まで無料で読めます。*4
今回は1〜4巻をミュージカル化。所々省略されてはいるものの、ほぼ原作通りに進んでます。

 

*1:連載は2009年~2017年

*2:私はスタミュミュ以降、吉谷さんに対して全幅の信頼を寄せている

*3:wiki見ると『BLEACH』『リボンの騎士』『さよならソルシエ』くらい。ソルシエも大好きなミュージカルなのでぜひ

*4:23時間で1話無料。アプリ内ポイントもあるので、1日に数話読み進められます