まえがみをきろう

ただのOLのただの備忘録

ステラボールに吹く特大感情の暴風〜ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.3-ホワイトチャペルの亡霊- 感想

 

初日おめでとうございました!

※Op.3観劇した方、または過去作を履修している方向けの感想です。ネタバレにはご注意ください。

※大千秋楽後、各キャラ・キャストの感想を大幅に追記しました。

 

目次

 

総評

このツイートを読めば全てがわかります。

 

ミュージカル版はもともとウィリアムとシャーロックの関係性に重きを置いていましたが、今回はこれまでの比じゃありません。

前回Op.2で、最後に「I  hope / I  will」という爆弾を投げられましたが、そのレベルの曲がゴロゴロあります今回。

これからご観劇の方は覚悟して臨んだ方が身のためです。

 

その最たるが上記の西森さんのツイートがそのまま歌になった、風ソング(と便宜上名付けます)(ダサいのは気にしない)

1幕2幕どちらも歌われるのですが、もうこれが、クソでか感情の暴風吹き荒れるとんでも曲です。

柔らかな風どころじゃない。ウィリアムとシャーロックももちろんですが、他のキャラも例に漏れずずっしり重い。

 

今回はジャックザリッパー事件とヤード冤罪事件、大学という、前回までの豪華客船やマスカレードの絵的な華やかさはないですが、その分感情の殴り合いがやばい。

それを踏まえて観劇すると、終演後、心に暴風が吹き荒れます。

 

 

第一幕『ホワイトチャペルの亡霊』

今回の副題にもなっているジャックザリッパー事件。お馴染みの「♪ここは大英帝国〜」ではなく、貧民街の住人たちのジャックザリッパーへの恐怖の歌から始まります。なので女性アンサンブルの衣装も娼婦風。ちょっと新鮮。

 

その後モリアーティ邸に場面が移りますが、銀行強盗事件がない…!ということは必然的にうたた寝ウィリアムもない…!これはぜひ見たかった…。この1点だけが今回の残念ポイントかも。

 

ただ、ボンドの更衣室問題や足壁ドンはちゃんとあります!ボンドが本当にかっこよくてかっこよくて、モラン大佐をコロコロするのがとても様になっています。今回の大佐はジャックとボンドの登場によっていじられ役に回ることが多くなりとてもキュートでした。(あの大男にキュートとは?)

 

ホームズ陣営では、今回はレストレード警部が大活躍。シャーロックに事件のあらましを説明する人形劇のシーン、絶対楽しいシーンになるだろうと思ってたら、とてもかわいい曲になってました。(「内臓で縄跳びをすな」と思っていたら、ジョンくんがそのまま「内臓で遊ばない!」と注意してくれたのでよかったです)

あとハドソンさん!人形劇の後片付けありがとう。今回はお休みでしたが、221Bのわちゃわちゃシーンでハドソンさんの名前を出してくれたのが嬉しかったなあ。

 

自警団・ヤードとの大捕物は臨場感があってかっこいい!今回のモリミュは、「動」のシーンでは臨場感たっぷりにかっこよく、「静」のシーンでは動かない代わりに感情で殴り合ってるような、どっちにしろ心身どちらかがボロボロになるシーンばっかりじゃん、みたいな印象が強かったですね。

 

さて、例のウィリアムとルイスの共闘シーンですが、武器交換が!!あった!!ありました武器交換!!!

ただ原作のようにお互いの武器を投げるというのは現実的に難しかったようでちょっと違った交換方法でしたが、いやそれでも交換が見れただけで嬉しいです。アニメでもステでも実現しなかったので。

この、ジャックザリッパー達のアジトでのシーン、ウィリアムの強者感がカンストしていました。これから殺す相手の横にわざわざ座って話始めるの怖くないですか?

そして、皆殺しにした後にもう一度座って落ち着いて、物思いに耽ってるのやばくないですか?でもこのシーン、後述しますが、おそらくシャーロックのことを考えているんですよね。(おそらくじゃなくて確実にだと思うけど)そしてそこをミルヴァートンに見つかってしまう。この時点で既に、おそらくOp.4に続くであろう三竦み構造が見えてるんですよね。

今回ミルヴァートンの出番は多くはないですが、それでも出るシーンでは確実に大きな爪痕を残している。まじで怖いですミルヴァートン。

 

事件解決後のわちゃわちゃ!楽しい!大佐がいじられてて楽しそうでいいなあ。原作では大佐的にしんどい展開が続いていたので。(今月号でだいぶ救われましたが。)

 

その後は、アルバート兄様の心情吐露ソングがあります。この兄様はウィリアムがひとりで死ぬ計画を立てていることを薄々勘づいている。そしてウィリアムからシャーロックに尋常じゃない思いを寄せてることも勘づいている。兄の勘は鋭いですね。

 

そして、ウィリアムのソロに移るわけですが、(この辺りの順番記憶曖昧なので間違っててもご容赦ください)

今回、Op.3を見ていちばん議題にあげたい、風ソング(と便宜上名付けました。)この歌やばい、西森さんのツイートまんまだ、やばい歌きた、と混乱しているうちに1幕が終わってしまってさらに混乱しました。

 日によるとは思いますが、私が見た公演ではウィリアムが涙を流していましたこの歌。寝そべって歌っていたところだったので、耳の方に流れてしまって見え難くはあったんですが、泣いていたはず。

ちょうど8/7のスイッチング配信の回です。映ってたらいいな。

 

第二幕『スコットランドヤード狂騒曲・一人の学生』

2幕はジャックザリッパーリッパー事件を経ての冤罪事件。パターソンも本格的に活躍します。

2幕の初ソロ曲はパターソン。すごくえろい。モリアーティの仲間になった時の心情を歌ってるはずなのに(でしたよね?ちょっと曖昧)なぜえろくなるんだ…?

 

ジョンくんのソロも心にきました。冤罪の被害者は医者で、ジョンくんも元軍医。そこを重ねた構図が新鮮で、でもしっくりきました。

 

そして、被害者のことを聞いたジョンくんが解決を焦れば焦るほど、今回は「自発的に動かない」という選択をしなきゃいけないシャーロックのもどかしさが伝わってきます。

でもこの「自発的に動かない」って、裏を返せば犯罪卿への信頼があるからこそなんですよね。2人以外のキャラクターを使って、2人の関係性を匂わす見せ方が好きです。

 

このシーンから派生するあれこれ、めちゃくちゃエモい仕掛けがされてるなと思っていて。

おそらくシャーロックとジョンが貧民街の冤罪被害者の家(かな?)に訪れて、赤ちゃんを抱いているその奥さんから事情を聞いているんですが、それが犯罪相談役のウィリアムと綺麗に重なるんですよ。Op.2のマルチナの母親から依頼を受けるシーンにそっくりなんです。

そして、(少し話飛びますが)ヤード事件解決後、ようやく奥さんと赤ちゃんの元に帰れた医者のシーン、こちらは初演のダブリン事件後に和解したバートンとミシェルにそっくりなんです。

つまり、ヤード冤罪事件では、シャーロックを通して相談を受けているウィリアムという物語的な仕掛け初演やOp.2のセルフオマージュでウィリアムを想起させるメタ的な仕掛けが同時に起きているんですよね。

・ウィリアムの追体験をして「犯罪卿=義賊」に辿り着くシャーロック
・初演とOp.2の追体験をしてその構図に気付く観客

って書けば伝わりやすいかなあ。(言葉の使い方が一部間違ってますが、これ以外に上手い書き方が思いつかないのでそのままでいきます)

 

そして事件解決を経て、「犯罪卿は義賊である」という結論を下したシャーロックは、ダラム大のウィリアムに会いに行くわけです。

 

伝わりますか?!このエモさ!!この構図、めちゃくちゃエモくないですか??!!

私に文章力があればもっと鮮明に伝えられるだろに、これが限界だ……。

 

(話を元に戻して)ヤードでの騒動も、JTR事件にも劣らない臨場感がありました。レストレード警部大活躍!ボンドもパターソンも活躍してて、新キャラが生き生きしていてよかったなあ。

特にボンドは、本当に自由にやっていて見ているこっちもワクワクしました。お茶目でかっこいい、最強だ。

 

アータートンは正統派な悪役って感じでとても好感が持てました(悪役なのに?)この作品の悪役ってどのキャラも一癖二癖あって魅力的だと思うんですが、アータートンは癖なく真っ直ぐな悪役なんですよ。そこが好き。

そして、ミュのオリジナル要素として、冤罪事件の裏で実はミルヴァートンが依頼を受けていた。裏帳簿がバレた後にミルヴァートンの泣きつくアータートン。そしてそれを片手で捻り潰して笑うミルヴァートン。真っ直ぐな悪役と癖が強い悪役の対比がすごいです。

 

そしてまさかの!ヤード事件解決後!再び西森さんのツイートを元にした歌が!!!

 

(定期的に貼りますこのツイート。それだけやばいので)

 

 

いや、1幕で既に正面から暴風受けてたのにまた???流石に混乱するが???

1幕ではウィリアムのソロが多かったですが、今回はモリアーティ陣営一人一人のパートも。ここの演出、後日要確認なんですが、みんなあえてウィリアムを視界にいれない(もしくは目を合わせない)いないものとして動いている…?

歌の内容的には、「最後の事件」を予想させるようなものでしたが、なんか、意図的にみんなウィリアムを避けているような気がしました。要確認。

 

確認しました。やっぱり各々のソロパートはあえてウィリアムをいないものとして動いてますね……。でも逆に、ウィリアムは一人ひとりを目で追って、真正面からその思いを受け取っているんです。

それなのにこの男、こんなにみんなの矢印が刺さっているはずのこの男、誰一人として心の核には寄せ付けない。シャーロック以外は。罪な男すぎませんか??????

 

そして大学!!一人の学生!!!数学科の学生達やビルくんも登場します。学生達がとてもかわいい。生き生き軽やかにダンス踊ってるのが、モリミュのアンサンブルとしてなんか新鮮でした。アンサンブルの皆さん、虐げられている人々か虐げている貴族になることが多いから、無垢な学生が舞台上にいるっていうのが慣れない。とても眩しく感じました。

 

そして大学を眩しいと思うのはシャーロックも同じで。

Op.2の「Catch me if you can」に対応するように、「Did I pass your test?」とシャーロックのセリフがあるんですが、列車でウィリアムを見つけた時ばりにはしゃいでいて可愛かったです。いやこのセリフ、原作読んだ時は割とさらっとかっこつけて言うようなセリフなのかな、と思ってたんですが、しっぽブンブン振り回して会えて嬉しい感情全開で、このシャーロックは本当にもう…と思いました。

 

Op.2の最後の曲はウィリアムとシャーロックのデュエットでしたが、今回は全員曲。しかも、来月にも続編をやりそうなくらい、今後の展開を期待させるような曲でした。

全員が登場しますが、核となるのはやはり、ウィリアム、シャーロック、ミルヴァートンの三竦み。(というか既にウィリアム&シャーロックvsミルヴァートンの構図になってたかも)

「運命の夜」という歌詞があるんですが、(ちょっと違うかも)これがどの夜を指すのかで、意味あいが全く変わる。ミルヴァートン別邸なのか、タワーブリッジなのか。

ミルヴァートンが効果的に演出されているので別邸だと思うんですが……。教えて西森さん……。

 

最後の曲を聞いて確信しましたが、これはOp.4絶対にありますね。多分だけど、Op.4で「犯人は二人」まで、Op.5で「最後の事件」になるんじゃないかなあと予想します。さすがに次回で最後の事件まで終わらすのは要素が多すぎる。

今回、「JTR事件とヤード事件を通して“犯罪卿は義賊である”と辿り着くシャーロック」をかなり時間使ってゆっくりやったなあと思っていて。

個人的には、Op.3は今まででいちばん原作を端折らず、詰め込みすぎず、丁寧に作ったんじゃないかなと思います。Op.4で終わるつもりならもっと詰め込むだろうなあと思ったので、だから少なくともOp.5まではやるんじゃないかな、と。あくまでも願望ですが。

 

ウィリアムとシャーロックの話

話したいことが多すぎる。

言わずもがなモリミュはこの2人が主演ですが、今までってそんなに絡みなくなかったですか?物理的にも、心理的にも。

今回も物理的には多いわけでは決してないですが、心理的な絡みがケタ違いに増えました。

 

1幕見てる時は、私個人的には「この2人は謎を通して交換日記してるんだなあ」と思ったんです。ウィリアムが犯罪卿として謎を残して、シャーロックがそれを解く。

JTR事件での犯人皆殺し後の演出なんかまさにそうで、死体の海の真ん中でシャーロックを思い、その後訪れるシャーロックに聞かせるかのようにハミングで去るウィリアム。

現場の惨状から推理して犯罪卿を思うシャーロック。

紙や文字を使わない文通というか交換日記というか。もしくは駅の掲示板にメッセージを残しておく、みたいな。お互い何も言わないけど、でもわかるでしょ?っていうやり取りが、心通じててとてもいいなあと思ったんです。

 

でも、2幕見たら違いました。交換日記とか文通とかそんな奥ゆかしいやり取りじゃなく、彼らは自分たちのこと手を取ってダンスしてると思ってたらしい。実際に舞台上でもリモートダンスしてた(?)

おたくの想像を軽々と超えるなよ。

 

というわけで彼らはダンスしているので(?)大学のシーンがそれはそれは楽しそうなんですよ。というか、全編通して楽しそう。ウィリアム役の方が稽古で「楽しい!幸せな気分!」と仰っていたらしいですが、それが本当に伝わる。

本当に、心に柔らかな風が吹いているんだろうなあ、と思います。(見てるこっちは暴風ですが)

 

 

各キャラ・キャストの話

ウィリアム

上述しましたが、本当に全編通して楽しそうで幸せそう。ですがこの後の展開を思うと胸が痛い…。

 

[追記]

そこかしこで言われてると思いますが、全編通してまるで初恋少女の様です。いや一つ一つのシーンをピックアップしてみれば、犯罪卿の強さもかっこよさもちゃんとあるんですよ。ルイスとの殺陣とか最高に滾りましたし。

でも、風ソングや、心のロンド、大学などなど他にもたくさん、犯罪卿にあるまじき少女の様な可憐さが見えるんですよね……。

だって、(これはシャーロックにも言えることですが)「♪この風に吹かれるくらいは神も赦されるだろう」とか「♪この胸に君が住んでる」とか、ラブソングだとしてもまあまあくさい歌詞ですよ。それがナチュラルに出てきちゃうリアムさん、やばいです。


そういえば今回は、初演の「♪罪を背負っても〜」やOp.2の「♪悪魔よ〜」みたいな、高音霊媒師枠(?)はあったんでしょうか。

 

シャーロック

モリアニ、モリステも見て思ったんですが、やっぱりミュのシャーロックは特異ですね。落ち着いてるんだか、変人なんだかわからない。

でも明らかに初演から成長したキャラクター像になっています。その細かい変化をつけるのが上手いなあ。

 

[追記]

初演やOp.2に増して、感情表現がより一層豊かになっていたのが印象的でした。上述していますが、今回の物語の大きな流れとして、「JTR事件とヤード冤罪事件を通して犯罪卿が義賊であると確信し、ウィリアムへ会いに大学へ向かう」という流れがあります。

犯罪卿=義賊と決定づけるまでの葛藤や、ウィリアムに会った瞬間の喜び、どれも感情の針が振り切れていて見ててとても楽しいですね。

そして、そんな溢れ出る感情を歌うソロも名曲揃いです。JTR事件で歌われる「謎の歌」が配信で永遠にリピートしてしまうくらい大好きです。癖になるメロディーとか、平野さんの色気のある歌い方とか、好きポイントは色々あるんですが、いちばんはその歌詞です。

「♪今もどこかで謎が生まれる 天を埋める無数の星の様に」という歌詞があるのですが、情緒もクソもないような男から「星」っていうロマンチックなワードが出るのがすごくツボで。(レミゼのジャベールとかもね)星の光の向こうに犯罪卿を見るって、結構ロマンチストなんだなシャーロック…と思って、更に好きになりました。


あと、全体の細かいポイントとして、所々で原作のポーズを抑えてくれるのも好きです。

今回は、レストレード警部にJTR事件解決を依頼された時の「微妙〜〜〜」のところですね。シャツ1枚であのポーズ、大変セクシーで良いです。

 

アルバート

告知動画で感情を吐露する歌があると聞いて、開演前からずっと期待に震えていました。期待通りでした。

決して出番が多い訳ではないんですが、長兄としてしっかり足跡残すのがさすがです。

 

[追記]

その感情吐露ソング後の「お前は一人じゃないんだ」というセリフで、毎回心臓がギュンなります。

彼のウィリアムを思う気持ちや、自分の所為で…と責任を感じている様子が、続く最後の事件を連想させて、見ていると心が辛くなる…。


これは全編通してですが、そして何回も言っていますが、立ち姿勢がとても綺麗。ポケットに手突っ込んでるのも、褒められた仕草じゃないはずなのに、なぜか上品に見えます。くぼひでさん自身が持つ気品が溢れてて、その美しさにため息が出ます。

 

ルイス

兄さん依存の危うさが薄くなったかも?なんだろう、今回は残念ながら兄さんソングはなかったのでそのせいかな?単純に、一慶くんの歌の安定感が増したせいかもしれません。

 

[追記]

本当に、一慶くんの歌の安定感が、以前と比べ物にならないくらい。低音が太くなった様に感じます。

JTR事件で「♪3人でジェームズモリアーティ」と歌うシーン。ここ、アルバートとルイスだけで、あえてウィリアムが歌わないのは狙っていると思うんですが、ルイスがすごく力強く歌ってるのがこの先の展開を考えるととてもしんどいです。自分もモリアーティの一員として誇りを持って、堂々とした良い声で歌うのに、その先にあるのは兄さんの死なんて…。


あとは今回、日替わりも楽しいですね!全公演分収録してほしい。特に好きなのは、ナイフをポロッと落とした回ですね。相変わらず兄さん強火で可愛かったです。

 

モラン

ボンドが仲間になっていじられキャラに回ることが多くなった大佐。ステの同じ話では、お笑い要員感が強くてうーんでしたが、こちらはいい塩梅。というかかわいい。大佐に対してかわいいという感想を抱くなんて……。

 

[追記]

井澤さん、結構甘い歌声だなあと思ってるんですが、モランがそんな甘めな歌声っていうのが意外性があって好きなんですよね、初演の頃から。

JTR事件の「♪何がなんでも援護するぞ」、モランの頼れる力強さがあるのに、どこか甘さがあるのが大好きです。

このモラン大佐で空き家の冒険が見たい。

 

フレッド

毎回恒例の女装、今回はありません。(それはそう)話的にしょうがないんですが、もっと見たかったし歌も聞きたかったなあ。

 

[追記]

大千秋楽まで見て、日を追うごとにフレッドの優しさが表出する様になっていった気がします。特に、JTRに対して「弱いものたちを狙っている、許せない」というセリフがフレッドらしくて大好きです。

フレッドって話すことが得意ではないタイプの子だと思うんですが、そんな子が一生懸命自分の思いを伝えようとしているところにグッときちゃうんですよね。


そんな寡黙なフレッドなのに、今回は日替わりでモランへの当たりが強いのも好きです。

「臭い」はシンプルに悪口だぞ。

 

ジョン

白衣着たジョンくんレア!そしてかわいい!冤罪被害者の医者を思う歌は、とても心に響きました。

 

[追記]

この作品ではかなり貴重な真人間。毎回「光」と表される彼ですが、今回も例に違わず圧倒的光です。

上述しましたが、ドワイト医師を思うジョンくんの歌がすごく真っ直ぐで大好きです。被害者の話を真摯に聞いている姿も、しっかり心に寄り添っているのが全身から伝わって、ジョンくんらしさが沁みます。


個人的なツボは、レストレード警部の人形劇ソングでいちいちリアクション取っててかわいい姿です。「内臓で遊ばないよ!」って毎回ちゃんと怒ってくれるの、ありがとうございます(?)

 

ボンド

かっこいい。かっこいいしか出てこない。道端でウインク向けられる令嬢になりたいです。

ボヘミア王とも違う男性の声で、女優さんってすごい…と思いました。

 

[追記]

セクシーさもあり、お茶目さもあり、最強のキャラクターです。ジャックへの自己紹介の歌で、語尾を抜き気味に歌うのが超セクシーでかっこいいです。なんかずっと語尾に♡マークついてませんか?


やっぱり彼は前作からの流れがあるので、モリアーティ陣営で活躍する姿も好きですが、シャーロックとの繋がりが見えるのも大好きです。ヤードへの潜入で、ばったり会っちゃえ!というありえない期待を抱いたりも。そんな私はこれらのツイートで死にました。

衣装、こんな細かいところもしっかり作り込んでいるんですね…!

 

ジャック

1幕めちゃくちゃお疲れ様です…!

ガッハッハって豪快に笑うのが好き。楽しそうに大佐をいじるのも好き。大好きなおじいちゃん。

 

[追記]

JTR事件の大捕物と、その前後の愉快なシーンのギャップが好きです。今回、初めてモリアーティ陣営で日替わりパートがありますが、ジャックがいるからこそだなあと思いました。ジャック自身は日替わりに加わることはあまりなかったんですが、この和気藹々とした雰囲気を作ってくれたのはジャックの功績だよなあと。

モランやパターソンとの気安い関係も好きです。

 

レストレード

今回ミュージカル俳優っぽかったです!!人形劇もヤード冤罪事件も、今回がいちばん見どころ多くてレストレードファンは楽しいだろうなあ。

 

[追記]

初演やOp.2では、日替わり担当の色が強かったですが、今回はレストレードの正義が見えたのがとても良かったです。ジョンくんと共に、この作品で珍しい普通の感覚を持った人間なので、この2人は思わず応援したくなってしまう魅力があるんですよね。

今回はパターソンとの対比もあって、彼の実直さが際立つのもいいですね。

 

パターソン

あの、えろい。なぜかわからないけどえろい。

 

[追記]

なぜえろいのかずっと考えていたんですが、見た目と喋り方や仕草のギャップだと結論付けました。

ぴっちり分けた髪、かっちり着込んだスーツ、完璧なスタイルが、元々の気怠げな歌い方を引き立たせていて、とてもいやらしいです。タバコとお酒の扱い方も小慣れている感じが出ていてとてもいい。

あとこれは元々大好きだったんですが、パターソンソロの輝馬くんのファルセットが最高でした。もう最高でしたね。

 

アータートン

先に書いてしまいましたが、とても真っ直ぐで正統派な悪役。とても好感が持てます。

 

[追記]

回数を重ねる度にどんどん好きになったキャラクターNo.1です。正統派な悪役と表現しましたが、アータートンの正義もわかるんですよね。彼にも守ろうとしたものがあるはずで、彼なりの正義に従って不正に手を染めてしまったんだと思うんです。結局引き下がれなくなってこんな結果になってしまいましたが。これまでの悪役の中でいちばん人間臭くて親近感を覚えました。


あとは純粋に歌が素晴らしいので、歌詞がスルッと入ってきて、聞いていて全くストレスがないのが大変ありがたいです。

 

ミルヴァートン

公演前からひらりょさんが大絶賛していたのがめちゃくちゃ印象的でしたが(キャストサイズチャンネル会員の方は、おももく第73夜のアーカイブを見てください。すごい褒めようです。)

その褒め方が決して大袈裟じゃなかったんだとわかりました。

「犯人は二人」でもっとゲスいところ絶対に見たいです。

 

[追記]

1幕の「奴によって私の唯一の楽しみが奪われてしまった」というセリフから机を勢いよく叩くシーンに本当に狂気を感じます。怖い。やべえ二重人格感が出ててとてもいいです。

そしてこのシーンは赤い照明の使い方が印象的で、底知れない気味悪さがあります。


あとは髪色。キャラクタービジュアルが出たときは、意外に黒めでもっと白っぽい髪なのでは?と思っていたんですが、これ、照明が当たると不思議にシルバーに光るんですよね。特にJTR事件の前半は正体がわからない様に暗めの照明になっていて、不気味に白く光るんです。最初から白いウィッグだったらそんな光り方にはならなかったと思います。このシーンを見て、この髪色はこれで良かったんだ!と納得しました。


このミルヴァートンで見る「犯人は二人」絶対に見たいですね。221Bで偉そうに振る舞う姿も、ブライトンでウィリアムとシャーロックの仲に動揺する姿も絶対に見たいです。

 

 

初日見た勢い余って書き殴ったら結構な量になってしまいました。記憶が曖昧なところが多々あるので、おそらくちょいちょい修正するかと思いますがご容赦ください。

 

 

とにかくまだ始まったばかり。

全公演無事に勝ち取れますように…!

 

 

初演感想

tadaol.hatenablog.com

 

Op.2感想

tadaol.hatenablog.com

 

 

主にシャーロックがかわいいなっていう話 〜舞台『憂国のモリアーティ case2』感想

 

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タイトルの意味はそのままです。シャーロックが生意気盛りの男子中学生にしか見えなくて、その可愛さがめちゃくちゃ刺さってしまったので思わずこの記事タイトルにしてしまいました。他意はありません。

 

目次

 

シャーロックの話

まさかのウィリアムとシャーロックが出会わないという初演から一転し、case2ではウィリアムとシャーロックの関係が軸になって話が進みます。

 

主なエピソードは、

1幕

シャーロック・ホームズの研究(原作2-3巻)

・二人の探偵(原作4-5巻)

2幕

・モリアーティ家の使用人たち(原作7巻)

・ホワイトチャペルの亡霊(原作7-8巻)

・ほんのちょっとだけ、一人の学生(原作8巻)

まず、2人が出会えてよかったね、シャーロックが生き生きしてるね、と超ハードル低いところで感動。

(でもノアティック号をOPの回想のみで終わらせるのは勿体なさすぎません?!)

 

タイトルの話に戻りますが、case2、シャーロックのかわいさが天元突破していました。本当にずーっとかわいいんですよ。

生意気盛りの男子中学生と表現しましたが、謎(ウィリアム)に対する姿勢がまじでこんな感じ。無邪気に目をキラキラさせてるんです。

 

その無邪気さ(幼さ)が残ってて、ホープ事件後の病み期までかわいく思えてしまう。部屋で銃ぶっ放しても、あらあら反抗期かな?って思ってしまうくらいには可愛い。

(というかここの演出は、優雅なバイオリンのBGMから急転して銃声が鳴ったので「病んでる時に弾く様な曲でもないだろ、そりゃシャーロックも病みきれないわ」とも思った。)

 

ジョンと喧嘩するのは感情をぶつけ合う様な青春みがあっていいし、列車でウィリアムを見つけた時のテンションの上がり方も素直な子どもっぽさがあってとてもいい。

あれ、やっぱりモリステのシャーロックって中学生なのでは…?

 

2幕では、原作ではあまりなかった、シャーロックとジョンもJTR事件に参加してる演出があって、これはいい改変だと思いました。

その時もめちゃくちゃ楽しそうなんですよ。犯罪卿のにおいを感じながら貧民街を駆け回る。大変無邪気でよろしい。

その後嬉々としてウィリアムに会いに大学へ行っちゃうのも終始楽しそうで微笑ましいんですが、ここまで書いてて改めて思いました。

モリステのシャーロックは主人公性がどのメディアよりも強い。

原作やその他のメディアで見られるシャーロックの危うさ成分が薄いんですよね。それは役者さんの特性かもしれないけど、演出や脚本でも意図されている気もする。

(余談ですが、ミュージカルのシャーロックのことは「まじの危ない変人」だと思っています)

 

ホープ事件から病みきらずにすぐ列車に移ったのとか、JTR事件へ意気揚々と(?)参加してるのとか、そんな意図もありそうかなとふと思いました。

そういえば、ホームズハンドってどこかでしてました?(見逃してたら申し訳ない……)もしそれがなかったとして、ないのが意図的だったら、従来のホームズ像からの脱却も意識してたりしたのかなあ、と考えたりも。

 

とにかく、case2のシャーロックは全編通して無邪気でかわいいよ、ということを最も伝えたいです。

 

ウィリアムの話

主演。主演ですが今回は出番少なめでしたね。逆にそれが裏で糸を引いてるラスボス感を出しててよかったはよかったかも。

 

case2のウィリアムにいちばん言いたいこと。

最後、急に病みすぎじゃない?どうしたの?大丈夫?早くない?

ウィリアムが病むのは原作的に必須だけど、大学でそんな苦しそうな顔する?声する?ミルヴァートン死んでからでも遅くないんじゃない???とちょっと心配になりました。

 

あと、なんで1幕の最後シャロとジョンの仲直り会話を盗み聞きしてたの???えっ普通に怖くないか???

このツイートは主にそのシーンを見て思ったことでした。

このシーン終わりで1幕終了だったので、主演の出番もほしくてあれだったんだと思うけど、怖い。

「シャーロックがヨーク行ったって聞いて列車飛び乗っちゃった♪」って笑ってくれよ、怖いよ盗み聞きしてるの……。

 

ウィリアムさんちょっと言動が最後の事件に向けて危うくなってきましたね……。途中まであんなに生き生きと「catch  me〜」って言ったりJTRの犯人たち皆殺しにしたりしてたのにね……。

ウィリアムがいい具合に病んできたので、展開スピードも考えるとモリステは3で畳むの想定してるのかもな、とちょっとだけ思いました。

 

各キャラの話

シャーロックとウィリアムについて書きすぎてしまったので一言ずつ……。

 

アルバート

しょうがないんだけどめちゃくちゃ出番少な…。ストーリーテラー的な役に回ることもあって、兄様の無駄遣い感がすごい……。でもそんな兄様もかっこよかったです。

 

ルイス

列車のシーン、シャーロックのことまじでナイフで殺そうとしてました…?殺気がすごい。「皆殺しですね」もよかったね〜〜。

 

モラン

2幕は大佐オンステージでした。ツッコミもやるしボケもやる。めっちゃ疲れてそう。とても愉快でしたね(本誌との差で風邪をひく)

 

フレッド

大佐と一緒に半裸になっていた!体格差がかわいかったですね。シャーロックとの戦闘もよかったよ〜。

 

ジョン

どんなメディアでも圧倒的光。研究がはしょり気味だったのが勿体なかったな〜〜。

 

ハドソンさん

出番少なかったのが勿体ない②。セリフ外のところで221B組わちゃわちゃしてたのがめちゃくちゃ微笑ましかったですね。

 

ボンド

好き。かっこいい。2幕からなの少なすぎるよ、もっと見せてよ、と終演後ひとり騒いでました。しっかり男の子だった。

 

ジャック

いつめん。相変わらず渋くてよいおじさま。JTRお疲れ様でした……。

 

レストレード

いつめん②。今回はギャグパートが大佐か警部に偏っててまじで大変そうだなと思いました。人形劇かわいかった。

 

 

その他の話

舞台セットがすごい!盆が回る回る!JTRの大捕物では縦横無尽にセットを走り回っていて大迫力でした。

これちょっと思ったんですけど、東京公演のみだったからこそあの演出やれたのかな。関西の同規模な劇場で盆があるところがパッと出てこない(あったらこっそり教えてください)ので。もし関西もやるつもりだったら別な演出になったんじゃないかな〜。

 

今回は初演の様な、階段がギシギシぐらぐらで不安になったり、急に椅子が浮いて困惑したりすることはありませんでした。

初演に比べてストレスなく見れたのはこういう本編外での引っ掛かりや、無理なエピソード編成がない(ないとは言ってない)のが大きかったと思います。

 

 

 

現地で初日を見ただけの勢いで書いてるので、違うところあったらすみません、雰囲気で読んでもらえたら嬉しいです。

 

千秋楽まで何事もなく終えられますように……!

 

 

 

この道はいつかきた地獄 〜舞台『文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱』感想

 

 

端的に言うと、「コロナ禍のエンタメ自粛に物申す系作品の是非」とかそういう話です。

 

 

文劇1,2は配信で視聴、アニメは途中まで、原作アプリは未履修という文アルど素人の感想です。

元ネタの文豪についても軽くググった程度の知識しかありませんがご容赦ください。

 

もくじ

 

 

鋭い刃物のような、それでいて重たい鈍器のような、とにかく観劇後の心に深い傷を負う舞台でした。(良い意味99.9%、悪い意味0.1%)

やべえもん見ちゃったな…というのが劇場を出て一番に浮かんだ感想です。

 

事前情報としてプロパガンダがテーマと聞いたので、こういうなんとも言えんようなテーマが好物の私は、嬉々としてチケットを取りました。

(モリミュ漬けな8月を過ごしていたこともあり、このキャストなら!というのが背中を押したので)

今思えばこれが地獄の始まりだったわけですが……。

 

 

地獄と表現する所以は2つあります。

1つ目は、「“プロパガンダ”をテーマにしてしまったこと」、そして2つ目は、「これが2.5次元作品であるということ」。

以下、その理由を書いていきたいと思います。

 

①“プロパガンダ”をテーマにしてしまったこと

プロパガンダ【propaganda】 宣伝。特に、ある政治的意図のもとに主義や思想を強調する宣伝。

 

これは良い地獄というか、意味のある地獄だと思っています。では何故“してしまった”と表現するのか?

それは、時勢やエンターテイメントの在り方にあります。

 

今回の文劇の最大の命題は「全体と個」です。「国家と一個人」です。ひいては、「統制するものとされるもの」とも言えるでしょうか。

物語の本筋として描かれるのは「全体に抗う個」ですが、今回本当に伝えたいことは「でかい権力に負けた後、絶望に射す一筋の光」なんじゃないかと思っています。

 

2020年9月というこの時期にあえてこの命題を取り上げたということに、制作陣の強い意志を感じ、その意図がダイレクトすぎるほどに伝わってきました。そして私は個人としてそれに共感しました。

これが“意味のある地獄”と表した理由。

そして「あえてこの時期にこのテーマを扱う」ことへのチャレンジが、受け手によっては良くも悪くも転ぶだろうなと思っていて。

これが“してしまった”と表した理由です。

 

今回、北原白秋佐藤永典さん)が初登場します。芥川龍之介(久保田秀敏さん)からは憧れの眼差しを浴び、弟子には萩原朔太郎三津谷亮さん)・室生犀星(椎名鯛造さん)という可愛らしい二魂がいて(弟子は取らない主義らしいですが…)。

そんな好感度カンストな白秋先生ですが、劇が進むにつれて仄暗い一面も垣間見えてきます。それが生前、自身の作品が「プロパガンダ」利用されていたという事実です。

確かに、作品リストを眺めているだけでも馴染みある『あめふり』や『この道』に紛れてかなり不穏な曲名も…。

 

文豪達が生きた時代は、言うまでもなく戦争の時代。国家という「全体」が、文化を飲み込み、利用し、人々を扇動させていった歴史があります。

劇中では流石に不穏な言葉や直接的な表現は避けられているようでしたが、それでも演出の各所に「その時代」を表す何かが散らばっていて感じとる度に鳥肌が立ちました。

館長(吉田メタルさん)の諸々の発言だったり、没年の懸垂幕とかですね。一番ブワッとしたのが、アンサンブルさんの歩き方でした。太宰くんが倒されたあと、急に軍隊の行進みたくなるシーンがあるんですよ。いやこっわ。怖って言っちゃいそうになってました。

 

話を戻しますが、作中では館長こそ「全体(国家)」の象徴であり、それぞれの文豪が「個」として描かれるという設計になっていました。

「個」である作品を守ろうと「全体」に抗う文豪たちを館長がどんどん制圧して行くのですが、結論から言うと全滅エンドです。

 

終盤、バッタバッタと次々に斃れていくんですよ。どんなに強い「個」であっても結局はでかい権力には敵わないんだな…と思うと同時に、この感じ、今年の春にイヤというほど味わったな?と。

 

「もしお望みならこの世の全ての文化芸術を消し去ればいい

小説も絵画も音楽も詩集も短歌も全部消し去ってみたまえ

その後この世界に何が残るのか、すなわち人の心に何が残るのか

その本質がわかるのか」

 

白秋先生のこのセリフに、全てが詰まっていると思っています。

 

舞台では館長の下に全員が斃れますが、最後は転生から目覚めて、太宰治平野良さん)と芥川龍之介が出会うシーンで幕を閉じます。

私はここに、「絶望に射す一筋の光」を感じました。

このシーン、真正面から受け取ると文劇1の冒頭シーンへ繋がるんだと思うのですが、いや、『君の名は。』か?階段で再会する瀧くんと三葉か…?

 

エンターテイメントが次々と無くなっていった現実世界で、やっと再開の兆しが見えてきたこの夏、演劇業界にまさにこの「一筋の光」が射した季節になったと思います。

 

 

だからこそ、劇中の文豪たちのセリフが滲みる。

 

前述した白秋先生のセリフももちろんですが、芥川先生と太宰くんのやりとりの中で、芥川先生の大好きなセリフがあります。

 

「それらの作品は、僕の血となり、栄養となっている」

「君の中には僕の作品が流れている。そうやって繋がっているんだよ」

 

全ての芸術や文化を愛する人にぜったい共感してもらえる。

この文劇もこうやって見た人たちの血肉になっていくんだなあと思います。

 

 

 

2020年、多くの演劇が日の目を見ずになくなっていきました。

色々な制限の中やっと再開できたこの時期だからこそ、この内容の作品を上演することは、演劇の復活と更なる発展を目指していく意志表明なのかなとも感じました。

だからこそ、

これだけのメッセージ性を持った今回の文劇だからこそ、伝え方は最善だったのか?という疑問も湧くわけで。

 

それが2つ目の地獄です。

 

 

②これが2.5次元作品であるということ

 

最初に書いた「良い意味99.9%、悪い意味0.1%」の0.1%の方です。

 

結論から言うと、「この文劇3自体もプロパガンダとして利用していると言えるのでは?」ということを感じて少しもやっとした話です。

 

プロパガンダ」を一言で表すならば「特定の主義・思想についての宣伝」です。

劇中の白秋先生も自分の作品の政治的利用について触れ、望ましくないものとして扱っていました。

 

館長との戦いで敗れたあと転生という形の光を見せたことも、結局のところ、

「個」は「国家」には逆らえない、しかし希望を持って抗い続けないといけない

「国家」は悪で、それに抗う「個」は正義である

些か断定的に書いてしまいましたが、ようはこういうメッセージを伝えたいんだと私は感じました。

 

プロパガンダ批判をする作品が、そのメッセージ性が強すぎるあまりプロパガンダになっているという構造ができるわけです。

 

強いメッセージ性のある作品は好きです。しかし、原作という大きな母体のある2.5次元ジャンルで、このような強すぎるメッセージを乗せることは、果たしていいのだろうか?

新進気鋭の劇団が小劇場で上演するのと、原作やスポンサーが絡む2.5次元で上演するのとではどうしても違ってきます。

 

こうして上演できているので原作まわりは問題なかったんだろうと思いますが、見ている方の中でもやっとする方はいるんじゃないかなあとは思うわけで…。

 

でもまあ、誰に好かれ嫌われようが、どう思われようが、作品は「個」であり唯一無二の存在というのは文劇3が教えてくれたことなので、今回はこの形で大正解なんだろうと私は思います。

 

ひとつの作品でこれだけ考えさせられるというのも久しぶりに味わう感覚なので、とても気持ちがいい、そういう意味でも見に行ってよかったと思える作品です。

 

 

 

◆感想

 

ここまで構造的な話ばかりだったので、純粋にお芝居の感想を。

 

・キャラクター、キャストについて

平野良さんは相変わらずぶっ飛ばしてるな〜!!

映像で文劇1を見ていてそのヤバさはわかっていたはずですが、生で見ると想像を超えるぶっ飛び方でした。

芥川先生の前だと急に電波になるの、なに?

太宰治と書いて太宰治とか意味わからないですもんね。

 

二魂のかわいさはプライスレスですね。この2人アニメ5話で見て、いやめっちゃかわいいやん…と思っていたら舞台でもめちゃくちゃかわいかった、優勝です。

 

あと私なんだかんだで中原中也深澤大河さん)が大好きなんでよね。何かと太宰くんに突っかかりながらもやっぱりいい人なんだよなあ。飲んだくれなところも親近感が湧く。

 

・ストーリー、演出について

 

今回の副題、『綴リ人ノ輪唱(カノン)』

この輪唱(追いかける、繰り返すと解釈)発展させて輪廻転生というのが今作のキーポイントでした。

 

このポイントがゲームや時勢との親和性がとても高かったので、こんなに心に残る作品になったんだなあと思います。

 

いったいこの太宰くんたちは何周目なんだろう?

 

あと、個人的にゾッとした演出が、終盤の白秋先生と太宰くんの朗読です。これマイク切ってやってたよね?

生の声での訴えが、ダイレクトに伝わってきて心が震えました。

この朗読劇っぽい演出、文劇ではちょこちょこ見受けられますが、今回は特に効果的に使われていたなと思います。

なんか、自粛期間中に配信の朗読劇が増えたことへの意趣返しなのかな、とも感じたので。

 

 

 

ともあれ、

 

文劇3、今この時に見るべき作品だったなと思います。

2020年を象徴するような演劇。

 

全公演無事に終えられますように、ささやかながら応援しています。

 

bunal-butai.com

 

この道はいつかきた道

ああ そうだよ

あかしやの花が咲いてる

 

この道 / 北原白秋